ノリタケがめざしたもの
2011.03.02
明治9年、森村市左衛門は義弟の豊と森村組(現ノリタケカンパニーリミテド)を設立する。森村組は妻の弟に任せて片腕として協力した大倉孫後兵衛の美意識と、森村市左衛門の経営手腕と高い志、豊のアメリカでの努力が実って森村組はやがて日本陶器その後ノリタケカンパニーと世界有数の磁器メーカーとして成長していく。その森村組が当初目指したのはアメリカ人が憧れたヨーロッパの陶磁器のデザインであった。
写真はセーブルの陶磁器美術館で見た19世紀のセーブル窯の壺である。ハンドルも含めて形は当時流行したギリシャーローマ様式の再興である。
この形によく似たオールドノリタケや、ノリタケ社製以外でも明治の磁器壺にこの形に影響を受けただろうと思えるものが難点も存在する。しかし、今回じっくりセーブル窯製を見て、本物の迫力というか、王立窯のみが持ちうる究極の美を感じた。絵の精緻さ、金彩の豊かさ、ゆるぎのない形の美しさ、どれをとっても群を抜く。ただ、難点は美術館クラスというか、個人のコレクションにはなりえないだろうなあという、今となってはあまりに高くなりすぎただろうなあと思わせる豪奢さである。