真葛香山磁器製緑柚鷺画鉢

2011.03.27

かなり窯傷と思われる大きな傷の入った初代宮川香山の磁器製緑柚鷺画鉢を手に入れ、銀継ぎがなってもどってきた。
思いのほか銀継ぎ代が高かった(正直なところをいえば、鉢自体の購入価格より高かった)が継ぎの出来栄えには満足した。

真葛香山は、板谷破山ほどではないけれど、私が知った時にはすでに一般的には購入できる価格ではなかったが、明治を代表する、しかも自分の専門の近代輸出工芸の代表的作品として、常に注目し、いつみてもその超絶技巧と品の高さに感嘆していた。
学生たちを連れての美術館訪問も先学期から、横浜みなとみらいにある真葛香山ミュージアムにしている。そこで学生たちの作品に魅入っている姿を見るのがなによりの楽しみだ。

私には縁のないものと思っていたのが、ひょんなことから、鷺画の鉢が手に入り、銀継ぎを依頼した。コレクターが収集するには傷が入りすぎており、これを持っていたとして、売ろうと思ってもたいした価格では売れないだろう。でも私は投資として工芸や絵画を所有することは考えたことがないし、今回の地震のようなことがあってなおさら、長く受け継がれてきた焼き物に対するあこがれとそれを守ってきた人々への尊敬、そして継ぎという技術を伝えてくれている人々への感謝が心から沸き起こってきて、この鉢を時間を忘れてみてすごしている。