商社マンのアメリカ

2012.01.04

1月3日東京ドームで開催されたアメリカンフットボウルの社会人日本一=オービックシーガルスと学生日本一=関西学院大学が対戦するライスボウルを観戦に出かけた。
後輩たちは負けたがいい試合だった。上背も体重もはるかにかなわない連勝中の社会人にひるむことなく、堂々とぶつかり、後半は追い上げられてもあきらめず、最後にも粘りを見せてタッチダウンに成功し、学生としての日本一の強さに恥じない試合運びだった。
ともに観戦したのは息子夫婦と、亡くなった親友の息子と新婚のお嫁さん。つまり、二組の新婚の若者たちに囲まれて「孤独に?」試合を見たことになる。特に親友の息子は3年前まで某国立大学の現役アメフトの選手だったので、普段は無口な彼がアメフトのルールがわからないお嫁さんに実にほほえましく丁寧に説明していた。
商社マンであった親友が亡くなったのはアメリカ、サンフランシスコに家族で赴任中、この息子が小学校4年生の時だった。上に6年生の兄と1年生の妹がいた。
この兄弟の結婚式に一昨年と昨年と続けて招かれたが、その都度にこのごろ流行の新郎新婦の幼いころを振り返る映像を見せられるともういけない。今の自分よりはるかに若い当時の親友の父親としての奮闘ぶり、日本人商社マンとしての海外生活での気負いがたくさんの写真にあふれていた。
その後、親友が異国で病をえて死を覚悟したときに、妻と3人の幼子を残していく無念さはどれほどのものだったか考えると今もたまらない。しかし、この親友の息子の明るさを久しぶりにまじかに見て、もうその悔しさを返上しようと思った。
兄弟二人とも大学でアメフトの選手になり、妹も大学でアメフトのマネージャーを務めた。彼ら三人にとって故郷ともいえるアメリカでの暮らしはきっと楽しいものだったのだ。スポーツマンだった親友は本場のアメリカで幼い子供たちにアメリカでアメフトの面白さを語ったに違いない。彼が伝えようとしたアメリカの楽しさ、スポーツの魅力は今息子たちが新しい家族に伝えようとしている。その姿を垣間見て、母校が負けた無念さより何倍もの喜びを感じて東京ドームを後にした。いいお正月だった。