漆はジャパンではない!!!
2011.06.28
渋谷のたばこと塩の博物館で開催中の『華麗なる日本の輸出工芸』を見に行ってきた。
柴山細工はすばらしかったが、展示でも図録でも「イギリスでは漆器を『ジャパン』と呼んだほどである」との記載があり、がっくり。
プロの漆芸家の間ですら、「英語で漆はjapan,陶器はchinaなので、Japan=日本は漆の国である」と公言する人が大勢いる。
東京芸大漆芸科教授で人間国宝でもあった松田権六でさえ、著書『うるしのつや』に漆がjapanであると語っている。
しかし、漆=英語のjapanではない。japanとは,漆にあこがれたヨーロッパの人々が、なんとか漆に近いものを作ろうとした結果生まれた倣製漆器のことであり、そのプロセスがjapanning。
去年里文から私が出版した『漆への憧憬』はその倣製漆器について1688年にイギリスで書かれた技法書の完訳である。
著者のジョン・ストーカーとジョージ・パーカーは、この本で日本製漆器(Japan workという表現を使っている)と、倣製漆器との差異について語り、自分たちが作り出そうとしているものが倣製漆器であると言明している。そして本物の漆器が作り出せないからこそ、この本を見ながら、素晴らしい材料(貝 黒色塗料 金属など)と高い技術を持って倣製漆器を誰でも作ることができれば、こんなうれしいことはなく、この本の出版の意義があると語っている。本物と偽物を見分けにくくするのではなく、本物の魅力を知ったうえで、倣製漆器の作り方=ジャパニングのノウハウを公開したいと出版を決意したのである。
漆=ジャパンではなく、ジャパンは倣製漆器であると、東京芸大漆芸科教授三田村先生もそのご著書で繰り返し語っておられるが、なかなか漆がジャパンではないとわかってもらうのは難しいのかなあ。
でも、10年前までは公立の美術館などでは見向きもされなかった明治の工芸がいろんな美術館で展覧会をしてもらえるようになったのは喜ぶべきことだといい風に解釈しよう!!