東日本伝統工藝展

2012.04.23

一昨日、日本橋三越で開催中の第五十二回伝統工藝展に行ってきた。

週末ということもあったのかもしれないが、けっこうな人出で、伝統工芸を愛する者としてはうれしい。

展覧会のご案内をいただいた白幡明先生の硝子の「角溝亀甲大皿『亀寿』」はどなたかの喜寿のお祝いをイメージして作られた作品だろうか。喜寿をことほぐのにこれほどふさわしいものはないだろうと思わせる明るく華やかな中にも凛としたガラスの強さがあった。

金工の大角幸枝先生の『南鐐香爐『蓬莱』」はこれまでの波を思わせるシャープな線で彫られた花瓶等と少し傾向が違って、今回の中央に置かれた蓬莱山は一見ごつごつとしている。しかし、その稜線はよくみると優しく、理想郷である蓬莱山はかくも人にとって住みやすい山なのではないかと思わせた。

九つの音色の佐伯守美先生の「象嵌釉彩線文花瓶」は、私の中では木立の線のイメージが強い従来の作品とは違って幾何学的模様がシャープで、着物の縞を思い起こさせる。

芸大の島田文雄先生の「青白磁栄螺文輪花鉢」は、上品な栄螺文が冴え冴えとして料理を乗せてみたいと思わせ、工芸=食器としての用途性に高く、品があり、手に取ってみて、できることなら使ってみたいと思った。(もちろん実際には、万が一手に入っても、もったいなくて使えないとは思うけれど)

漆芸では、室瀬和美先生の「蒔絵螺鈿香合『飛鳥』」は千鳥が三羽舞っていてかわいらしいなかにも漆芸というものの伝統を感じさせた。歴史的漆芸品の修復にも多く携わっている室瀬先生ならではの作品と思われた。

田口義明先生の「青貝蒔絵香合『実り』」は形がすこし変わっていて、タイトルの「実り」も何を意味するのか分からないが、青貝の線が子供のころに遊んだ浜辺に寄せてくる波を思わせ、懐かしさを感じさせる作品だった。

芸大の松崎森平先生の「螺鈿蒔絵箱『星見草』」は繊細さと大胆さを併せもった作品で、下部の青さがひときわ引き立つ。若々しい作品だ

漆芸の作品の中では、同じく芸大の小椋範彦先生の「割貝蒔絵椰子文香合」がもっとも心に残った。
先週、原田マハの『楽園のカンヴァス』というルオーの作品に関するミステリー小説を読んだせいもあるのかもしれないが、小椋先生の椰子文はルオーの絵画をもイメージさせる濃密さがある。
むせるような熱帯の密林の中を分け行くと生えている椰子を思わせ、背景の黒漆が文字通り漆黒を意味する闇の世界だ。この作品を眺めているだけで、インドシナ半島に旅行しているような気分になれる作品である。

木工芸作品を鑑賞していると、ばったり須田憲司先生にお会いした。

展覧会に行く楽しみに、知り合いの先生方の出品作品を見てそれまでとの傾向の違いを感じたり、若い作家の台頭に喜んだりもあるけれど、こんな風に知り合いの先生と会って、工芸について語るのがなによりの喜びである。