「Splendour & Power ハプスブルグ家の秘宝」展
2011.11.14
イギリスから週末に戻ってきた。ケンブリッジでは、娘とパンティングを楽しんだり、娘のいる研究所を訪問したりしたあと、フィッツウィリアム・ミュージアムへ。
パンティングはこの季節はかなり寒いのだけれど、やっぱり、オックスフォードとケンブリッジに来たらどの季節でもパンティングは楽しみたい。
そして残念ながらパンティング中の景色は、オックスフォードよりケンブリッジのほうがはるかにすばらしい。最初は娘と二人で漕ごうかといってたが、結局ガイド付きにして正解。ケンブリッジに所属する学生でとても大学の歴史にも詳しかった。
風は冷たかったが、紅葉する木々に囲まれたケンブリッジの秋のカレッジの様子を楽しめた。
パンティングの後は、楽しみにしていたケンブリッジ大学付属フィッツウィリアム美術館で開催中の「ハプスブルグの秘宝展」へ。その手前の部屋でこれも特別展である「フェルメールと女性たち」という展覧会を先に見た。
さすがにフェルメール展には多くの人が見に来ていた。
ただ、いくつかの作品はたしかにすばらしかったが、そうでない作品も来ており、また、フェルメールと同時代のオランダの作家の作品も展示されていて、会場も混雑していて、感激を味わうにはちょっと不満足。
フェルメールはやはり、美術館の奥まった、見過ごしそうな小さな部屋の一角に静かに展示されてあるのを、見つけて、その部屋に時間を十分とってゆっくりと楽しむのが最高の鑑賞だなとおもう。
それに比べてフェルメールの隣の部屋でやっていたSplendour & Power ハプスブルグル家の秘宝は期待を裏切らなかった。どの作品も、当時としては最高の技術と芸術性をもった優品ばかり。何時間いても飽きない。ひとつひとつ時間をかけていつまでも眺めていたい。
作品を楽しむ一方で、日本に帰国後、日本の工芸家を訪ねるという仕事が待っているので、工芸とパトロンの関係について考えてしまった。王侯貴族といったほんの一握りの階級に富が集中し、それ以外のほとんどの国民が飢えていた時代、生きていくのがやっとだった人たちのことを考えると、つらいが、それでも、やはり工芸の美というものは、庶民の生活など無視して、パプスブルグ家やブルボン王朝、メディチ家といった桁外れの金持ちがいないと花開くことはなかったのだと確信を持って言える。
写真にある図録の水差しは純金製である。もったいないとか贅沢だとか、批判は当然あるだろうけれど、美しいものは美しい。そして今やこういうものをつくる技術を支えるパトロンの存在が減っていることを思うとき、いかにこういった美術工芸品を次世代に伝えていくかが我々の今後の使命だと思った。