アリス・マンロ― ノーベル賞受賞ー女性からの視点が優しく、豊かな読後感
2013.10.11
アリス・マンローがノーベル文学賞を受賞。短編小説の名手で、どこにでもいそうな女性のどこにでもある出来事を描いて、そのどれもが豊かな読後感をもたらす作家。多くのアメリカの現代作家に比べると英語もとても読みやすく、旅行に持っていてどこでもすっと広げられる分量の短編が多い。
エジンバラにルーツを持ち、カナダ人である彼女の作品を読むといつもイギリスの冬の日々を思い出す。同じくブッカー賞を受賞したカズオ・イシグロと比較すると、イシグロが同じ曇天の空の下での生活を描いても常に男性的な視点で過去をたんたんと冷徹に描き出スのに対して、マンローはうん、あるある、こういう感じと女性の視点を優しくそれでいて彼女しか文章にし得ない言葉で市井の人たちの(特に女性の)生活をを紡ぎだしていく。
私が印象に残っているのは、”Material”。ヒューゴという作家を紹介することからこの物語は始まる。ルーマニア移民の現夫ガブリエルについての描写から、主人公が元夫ヒューゴとのかつての生活を思い出していくにつれ、主人公を取り巻く人々の人生が鮮やかに浮き上がってくる小品だが忘れがたい作品。ノーベル賞を受賞したということで他の作品も読み返してみよう!