本を書く その1-28/11/2014-山本一洋の世界

2013.11.28

私は今、プラチナ彩で脚光を浴び、4年先の展覧会まですでに予約されているという山本一洋先生の本を執筆している。

私は今までに美術工芸関係を中心に10冊以上の本を出版している。
知らない人からは印税で食べていける?などといわれてるが、とんでもない。

印税で食べていけるのは東野圭吾や宮部みゆきといった一部のベストセラー作家で、それも小説家である。

だから私のような芸術分野の本を出版しても、食べていけるどころか、その本を執筆するにあたり、資料作りのための文献を購入すると(またその文献が美術史関係はとんでもなく高い)、完全に赤字である。

だいたい、本の印税は一冊につき定価の3-8%が常識で、増刷されると印税率が上がるが、専門書の場合は増刷はほぼないといっていいので、最初の印税で終わりである。
一冊3000円とすると、3%で90円、8%で240円。たとえば中を取って5%としよう。すると一冊の印税は150円。しかも3千円の本といえば、買う側に立つとよっぽどその本に惹かれないと買わない値段である。かつては大学の教師は学生にテキストとして買わせることもできたが、今は学生もなかなか教科書と言っても買ってくれない。

それでも一般の書店で専門書だがとても売行きがよく、500冊売れたとしよう。

5%印税の合計は150円X500冊=合計7万5千円である。ただ、その場合最初から20%の源泉徴収が差し引かれるので、75万円X80%で6万円である。
ただ残念ながら、500冊売れる本などというのはめったにない。専門書の場合は、著書が名が知られていない場合は(専門書はその九割が著者は一般的には知られていない)最大に売れて200冊がいいところ。
すると印税一冊につき150円X源泉徴収80%=120円 200冊売れて、結果は24000円である!!

しかし、執筆前に、購入する古書の中には2万円を超すものもある。
書く前に2冊以上買うともう執筆前に印税収入を上回っていて、スタートから赤字である。ただこれは、どのような事業をする前にも初期投資は必要なのでとりあえず目をつぶろう。

刊行されると著者引き受け(これは定価ではなく著者ということで少し安くしてもらえる)というのがある。これは出版社からは無理強いはされないが、実際のところ、恩師やお世話になった方々、身内などに出版社から著者が買い上げて献本で無償で送る分や、次の執筆につなげるために、名刺代わりに自分で持っておいてその都度献本する。

「働けど働けど我が暮らし楽にならざり、~じっと手を見る」もはや石川啄木の世界そのものである。

それでも私の場合、本を書くのは、オールドノリタケ関係も、前回の『美術工芸の明日を担う20人』里文出版2013年も、今回の『山本一洋の世界』(仮)も、次世代に私が知った素晴らしい技と美を伝えたいからに他ならない。そして第一稿を出版社に送った瞬間の達成感を味わいたいから。あの瞬間の喜びは何物にも耐えがたい!

山本先生のプラチナ彩の素晴らしさをいかに、独創的に、しかしわかりやすく、できるだけ多くの人に伝えられるか、、、苦しみでもあり、楽しみでもある。