秋の七草 フジバカマ
2011.09.20
昨日、木工作家の須田憲司先生がうちに来られた折に、自宅に咲いているフジバカマや月桂樹など、先生の庭に咲いているのを持ってきてくださった。写真は秋の七草のひとつフジバカマである。花入れは須田先生の作品。
花入れは後ろの垂撥とともにカエデの一種のシカモア材。シカモアはヨーロッパメイプルとも呼ばれる。木目がきれいで、ヴァイオリンのストラディバリウスにも使われたこともあるとか。
花入れのデザインは月。今の季節にピッタリ。金を水銀で貼り付け熱を加えると水銀が蒸発して、金だけ残る。かなり分厚い金で月の存在感を出す。水銀の扱いが注意を要し、素人ではもちろんできないが、昔から使われてきた伝統的技法である。
外は残暑厳しく、台風も近づき、夏の気分から私自身もまだ抜け切れていないのに、季節は秋へと確実に移り変わっている。
秋の七草は、万葉集で 山上憶良が詠んだことから定まったとされる。
「秋の野に 咲きたる花を 指折り(おゆびおり)
かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花葛花 撫子の花
女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花」
その中でもフジバカマは咲いているときにはあまり匂わず、枯れかけてから、かすかに桜餅のような甘いにおいがするという。これまであまり匂ったことがなかったので、咲いている間も楽しめるが、
このあと枯れかけたときもその匂いを楽しみにしていよう。
下の写真のフジバカマの花卉の下にあるのは栗。これも須田先生のお庭にあったもの。今年は栗の生育が悪くてとおっしゃっていたが、部屋にあるとフジバカマとともに秋を感じることができてうれしい。栗を入れているのは輪島の漆器。
玄関には漆芸の三田村先生の漆の花卉を置いてたいていバラを一輪さしているのだけれど、優れた現代工芸というのは、材料は伝統的なものを使いながら、現代の家に置くと、圧倒的な存在感を持ち、それでいながら、他の家具とも調和して、工芸本来の「使う」という目的と、「美術」という域でのバランスを崩すことなく存在感を示す。新しい伝統工芸の未来を感じる。