裏切りのサーカス Tinker Tailor Soldier Spy

2012.04.24

ジョンルカレの名作 Tinker Tailor Soldier Spyを映画化した「裏切りのサーカス」を見てきました。

舞台は1970年代、冷戦下まっただ中のイギリスの諜報部。

ロンドンのケンブリッジサーカスに面したところに本部があることからサーカスと言われる英国情報局秘密情報部(M16)とソ連国家保安局(KGB)の攻防。

リーダーのコントロール(ジョン・ハート)はサーカスの幹部の中にソ連の二重スパイ(もぐら)がいるとの情報を得て、その情報を得ようとしてハンガリーの将軍を亡命させてようとして工作員ジム・プリドー(マーク・ストロング)を送るが作戦は失敗。コントロールは責任を取って、右腕であったジョージ・スマイリー(ゲイリーオールドマン)とサーカスを去る。

新リーダーには幹部のパーシー・アレリン=ティンカー(トビー・ジョーンズ)が昇格し、ビル・ヘイドン=テイラー(コリン・ファース)、ロイ・ブランド=ソルジャー(キアラ・ハインズ)、トビー・エスタヘイス=プアマン(デビッド・デンシック)を率いる。

コントロールは退職後謎の死を遂げるが、4人の幹部の中にもぐらがいると考えたレーコン次官(サイモン・マクバーニー)に極秘捜査を命じられたスマイリーはピーター・グラム(ベネディクト・カンバーバッチ)らと作戦を練る。

これらのキャストに、ソ連にねがえったとされている工作員リッキー・ター(トム・ハーディ)や、諜報室の生き字引とされたコニー(キャシーバーク)など、イギリスの演劇や映画界の名優たちの演技が厚みを加えている。

コリンファースは「英国王のスピーチ」のジョージ六世の演技より今回はどちらかといえばブリッジ度ジョーンズで演じた役どころというか、どこか軽さを見せたプレイボーイっぽい役どころ。

そして最高の演技をするのが主人公スマイリー役のゲイリー・オールドマン。
この原作がテレビ化された時はイギリスを代表する名優アレックスギネスが演じているが、私としてはテレビのアレックスギネスより、ゲイリーオールドマンの演技の方が原作に近い気がする。
笑わない、怒鳴らない(奥さんをコリンファース演じるビルに寝取られていてさえ、大声を出さない)、服も三つ揃いのグレーのスーツとカーキのコートでほとんど同じ。

しかし最初のほうでスマイリーが鉱泉治療のためか、沼か池のようなどろんとした水の中を泳いでいる(絶対入りたくなさそうな汚れた水)シーンで早々と観客を惹きつける。なにかが起こると思わせる。

画面は全編暗く、すこし長すぎるきらいもある。しかしたとえば、スマイリーのソ連のスパイとの出会いの独白など身を乗り出して聞いてしまう。

一度ではもったいないのでもういちど行ってみたい映画である。