V &A ミュージアム  『ポストモダニズム』展覧会

2011.11.05

ロンドンのヴィクトリア&アルバート・ミュージアムで開催中の『ポストモダニズム―様式と破壊 1970-1990』(2011年9月24日 – 2012年1月8日)を見てきました:

まず結論から言うと非常に心地よい展覧会でした。その理由は大きく分けて3点:

1.展示の作品が吟味されていて見やすい
2.ポストモダニズムを体感できる展示になっているが、過剰さがない
3.自分がポストモダニズム自体を素直に受け入れることができた

まず作品の吟味という点では、こういった展覧会では作品数が多くなりすぎて、ごちゃまぜ感がでてくるのが今回の展覧会は、展示数を絞り込み、作品の展示に際し縦線を強調した、それでいて全体では動線を大事にそしてわかりやすくしている。
展覧会によっては、展示室番号がちらしなどに書かれており、また部屋でも順番があるにもかかわらず見学者がどちらにいけばいいのかまよう場合が観られるにもかかわらず、今回の展覧会は見学の順番がポップな矢印で示されており、それが違和感なくアクセントともなっていた。

また、印象派や日本でいえば国宝といった非常に価値のある作品が少ないからか、見学者がほとんど手に取っていいような至近距離で作品をみることができ、作品のタッチや出来栄えがよくわかり、かつ、建築、グラフィックなどと分野を特定して部屋を設けていないので、ゆっくり歩きながら、ああ、これもそうだったのか、あれもそうかと楽しめる。おそらく、美術史の専門ではなくても(私も自分の分野から言えば時代が違うので素人といっても良い)、自分の時代とてらし合わせて(日本人ならまさしくバブル期の自分)、気軽に見ることができる。

もちろん、「ポストモダニズム」というものをとらえた展覧会なので、ポップな面、特にレイブ、ニューウェーブ、ヒップホップやグラフィティなどの音楽にも目を向けており、当時の合言葉であったモア・イズ・モア(もっと多ければもっと価値がある)」を見せてはいるのだが、それが企画の段階で学芸員の中で昇華されて、たとえば、メンフィスというポストモダニズムを代表するようなスタイルにしても、美術として確立された感のある完成度の高い展示になっていた。

日本からの作品としては、導入部ですぐに横尾忠則のポップなポスターが展示され(これは図録にも最初に登場する)、そうか、そうくるか、横尾がトップかと、ちょっと戸惑いがあり、展覧会自体をどう受け止めていこうかとたじろいでしまった。
しかし、やがて展示会全体の流れの中で心地よくいただかれるようにポップな音楽に乗せられ進んでいく。日本作品として次には、磯崎新の筑波学園都市の図であった。しかしそのころは、少し時代的には前になるがミュージカルウェストサイドストーリーを思わせるような網目のフェンスに囲まれて、その後川久保玲のコムサの真っ黒なファッションを見ても、もはや古く感じられるほど、時代の潮流を体感する。ミュージカル「ミスサイゴン」を客席から見ているような、またはもはや遠くなった感のあるベトナム戦争の報道写真展を見に行ったようだ。最初は一体化していた展示が、終わりにはちょっと後ろに下がってみたいような適度な距離感が生まれていた。
日本ではバブルというと社会現象としてマイナスにとらえることが多いが、芸術の中にポストモダニズムが残してきたものは大きいと改めて感じさせてくれた。

2時間ほど会場にいただろうか。時間の経過を感じさせない素晴らしい展覧会だった。